多町市場の祭の様子
●神田多町宵宮の図―吟月画

市場の中心、神田多町二丁目の祭礼宵宮の様子が描かれている。
灯籠万燈に囲まれた門構えの提灯には「神田御祭禮」とある。
神田祭の宵宮の闇に包まれた多町に煌々と輝く神酒所飾りは、
中央に神田大明神の大幟が二本はためくが高すぎて頂上は夜空の闇に溶けている。
その奥のお仮屋には市場の大神輿(江戸神社御本社)が納まり
その右には巨大な「鐘馗」人形を乗せた江戸型の山車がさらに巨大な山車小屋に納まっている。
山車の一層の囃子台では鉢巻も凛々しい若者がお囃子を奏でている。
さらに右には緋毛氈に獅子頭が飾られている御神酒所があり
髷に裃をつけた者たちが忙しそうにしている。
左はじの提灯飾りも現代では見たこともないスケールの大きさである。
贅を尽くしたこの豪華絢爛な神酒所飾りは財力ある神田市場の多町二丁目ならではのものであろう。

この絵は明神会館のロビーに大きく展示されているので是非一度見ていただきたいと思う。

●大正五年(1915)市場多町通りを渡御する旧二の宮神輿(将門神輿)

この屋形造りの二の宮神輿は明治七年までは平将門命のお乗り物で
関東大震災後に行方知れずとなり、幻の「将門神輿」と呼ばれている。
この年には、明治七年よりの新二の宮の恵比寿様(少彦名命)のお乗り物となっている。
二の宮神輿を担ぐのは、白丁の者たち。
ひとり鳶の者が前棒にあがり、扇子で指示をしている。

渡御祭の行列が多町市場を巡行している。
五月とはいえ、かなり陽射しが強く暑そうである。
人家の2階には日除けの簾がかかっている。

近年、旧多町一丁目の昭和七年、九年(1932・1934)の祭礼の映像フィルムが見つかり
その中に動く「将門神輿」を発見できたことは幸いであった。